No.258『最大の利益がえられなくてもよい』

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こころのおそうじ

こころが休まる本

ある工場の経営者がいました。
彼は、少しでも利益を上げるために、つねに従業員たちの仕事ぶりを見張り、怠けている者がいれば厳しく罰しました。
しかし、数百人の従業員をひとりで完全に見張ることはできません。そこで彼は、従業員たちを見張る役目の従業員を新たに雇うことにしました。

はじめは、50人の従業員につき1人の見張り役をおいていたのですが、彼はそれでも安心できず、30人に1人、10人に1人と見張りを強化していき、ついに1人につき1人の見張り役をおくことになりました。
しかし今度は、見張り役がきちんと見張っているかが気になって仕方がありません。そこで、見張り役の見張り役を雇うことにしました。
結局、人件費は当初の何倍にもふくれ上がり、工場は倒産してしまいました。
これはひとつのたとえ話ですが、人間関係において不満や怒りを感じたとき、思い出すと役に立つ教訓です。

すべての従業員が、誰ひとり怠けることなく、きちんと働いてくれたなら、経営者は最大の利益がえられるでしょう。
しかし、わずかな損を見逃すまいとして、かえってその損害を超える対策費用をかけてしまったのでは、元も子もありません。
厳しく従業員を監視するよりも、ひとこと「いつもありがとう」とねぎらいの言葉をかけてやる気を出させるほうが、生産の能率はずっと上がるはずです。

恋人がつねに自分に気を遣ってくれているか。自分の言うことをきいてくれるか。ほかの異性に目を奪われていないか。
恋人の言動をいちいち監視し、愛情を確かめ続けなければ気がすまないという人がいます。
「恋人とはこうあるべきだ」という理想像を勝手につくり上げ、その鋳型に相手をはめこみ、何か自分の気に入らない点を発見したなら厳しく責め立て、改めさせようとするのです。
そのために、「いつも不安と猜疑心にさいなまれ、恋愛をまったく楽しめない」という大きなコストを負担していることに気づいていないのです。

恋人が何の欠点もない完璧な人間で、つねに溢れんばかりの愛情で自分を包んでくれたなら、それはたしかに最高の幸せです。
しかし、最高の条件がかなえられなかったからといって、別に損をしているわけではありません。
相手を厳しく監視するよりも、ひとこと感謝の言葉をかけ、自分から愛情を示すほうが、はるかに愛される確率は高くなるでしょう。

他人はけっして自分の思い通りには動いてくれませんし、世の中は自分に都合のいいようにお膳立てされているものでもありません。
まず、そういうものとして受け入れなくてはならないのです。
ときには気に入らないこともあるし、腹の立つこともあります。
他人を完全に自分の都合のいいように利用することは不可能なのです。

「他人に嫌われたくない」という不安にとらわれすぎて、つねに他人を監視し、他人のあら探しをし、そのためにいつもイライラさせられ、人付き合いをまったく楽しめない。その損失は、「ときには嫌われることもある」という損失よりもはるかに大きいのです。
つねに完璧を求められれば、相手も息が詰まってしまいます。
何のために他人と付き合うかといえば、人生を楽しむためです。その原点を忘れてはいけません。
最大の利益はえられなくても、恋人や友人と付き合うことによって、すでに自分は充分に得をしているのです。

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