No.252『正しい答えを見つけなくてもよい』

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学校では、問題を早く、正確に解くことを教わります。
ゆえに私たちは、生きていく上での悩みや問題に対して、「できるだけ早く、正しい答えを導かなければならない」と考える癖がついてしまっています。
そして、それを解決できなければ前に進めない、他人から認めてもらえない、と悩んでしまいます。
何かができない、判らないという問題の上に、「悩みを解決できない私は、ダメな人間だ」という新たな悩みを積み上げてしまうのです。

どうすれば人に好かれる人間になるだろうか。
どうすれば自分に自信がもてるのだろうか。
私にはどういう職業が向いているだろうか。
私は何のために生きているのだろうか。

私たちは日々、さまざまな悩みを抱えて生きています。
その悩みが重大であればあるほど、答えは容易には見つかりません。
「今日の夕食は何にしようか」「休みの日はどこに出かけようか」という程度の悩みなら、答えはすぐに決められます。
「なぜ私は、今日の夕食を決められないのだろう」と落ち込む人はいないでしょう。

当たり前のことですが、人が悩むのは、悩むほど重大なことだからです。
「なぜ悩みを解決できないのだろう」と落ち込むことはないのです。簡単に解決できる問題であれば、そもそも悩むこともなかったのですから。
無理に正解を見つけようとすれば、どうしても「こじつけ」になってしまいます。
かつてのオウム真理教の信者たちは、若いうちからあまりに手っ取り早く悩みを解決しようとして、「解脱」などという即席の明快な答えに飛びつき、自分たちは正しいと思い上がって、かえって自分の頭で判断する能力を失ってしまいました。

正しい答えを出せなくてもよいのです。
悩みが重大であればあるほど、早急に答えを出そうとせず、一生をかけてじっくり考えるべきなのです。

「あ」という文字を長い間じっと見つめていると、何だか不思議な図形に見えてくることがあります。
なぜこんな曲がりくねった線の組み合わせが「あ」になるのだろう。なぜ自分は、今まで何の疑問も抱かずに、これを「あ」と読んできたのだろう。はたして日本語にこんな文字があっただろうか……。
ひとつの問題を深く考えれば考えるほど、頭は混乱して、迷宮から抜けられなくなってしまいます。
しかし、友人に手紙を書いているとき、「『あ』という文字の成り立ちが判らないから、手紙が書けない」というのは、おかしな話です。
なぜ「あ」が「あ」なのかが判らなくても、とにかく文字を書いて、それを他人に伝えることに意味があるのです。

他人から愛される人間になることは、なかなか難しいことでしょう。しかし、少しでも愛される人間になろうと努力し続けることに意味があります。
「どうすれば自信がもてるのか」は判らなくても、今の自分にできることを精一杯やることはできます。
「何のために生きるのか」と問う前に、すでに生かされている自分に意味があります。

何にでも疑問をもち、答えを求めることは間違ってはいません。また、何でも問題を先延ばしにすればよいというのでもありません。
しかし、「答えを出せなければ自分の人生に意味はない」と思うことは間違っています。
自分に最適な職業を見つけられることは、むしろまれな幸運でしょうし、「何のために生きるか」が判って生きている人もいないでしょう。
どのような答えも、「今の自分はこう思う」というかりそめの答えにすぎないのです。

ともかく、何でもやってみないことには判りません。
やってみて、たとえうまくいかなくても、「やってみたこと」が無駄になるわけではありません。
やってみてはじめて、うまくいかないことを身をもって知ることができたのですから、その分確実に成長したのです。
何でも経験しなければ、他人に共感することもできません。
その試行錯誤の繰り返しのために人生の時間が与えられているといってもよいでしょう。

「できないこと」について悩むよりも、「できなくても楽に生きるには、どうすればよいか」を考えることのほうが重要です。
「楽に生きる」とは、苦悩から逃げることではありません。
苦悩を苦悩としてありのままに受け入れるということは、もっとも強い精神力と勇気を必要とする、厳しい道なのです。

迷うことができるのは、少なくとも選ぶ権利が与えられているということです。
広い世界を見渡せば、きょう一日を食べていくことに精一杯で、自分の人生を選ぶことができない人がたくさんいます。
選択に迷うということは、「選ぶ自由すらない」という大きな問題をすでに解決しているということでもあるのです。

悩みに直面したとき、「正しい答えを見つけなければ、自分の人生ははじまらない」と考えていては、一歩も前に進むことはできません。
悩み苦しむほどの重大な問題だからこそ、長い時間をかけて解決すればよいのです。
答えを探す道のりこそが人生なのです。

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