No.208『劣等感をどう克服するか』

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ある人は、人付き合いが苦手であることに悩んでいます。
自分は口べたなせいで、仕事も恋愛も人間関係も、何もかもうまくいかない。はじめて会った人とでも気さくに話ができ、すぐに仲よくなれる人がうらやましくて仕方がない……。
そう悩んでいる人は、どうすれば救われるのでしょうか。

その答えは、「口べたでも好かれる人間になればよい」という以外にありません。
もちろん、話がうまいということは、人間としての大きな長所には違いないでしょう。しかし、世の中のすべての人が、そういう長所を求めているわけではありません。
また、「話し上手で、皆から好かれている人」は、単に話がうまいからという理由だけで好かれているわけでもないはずです。
口べたであるという悩みを解決するために、無理に口べたを直す必要はありません。口べたであることが気にならなくなりさえすれば、それでよいのです。

劣等感は子供のころから染みついている考えだから、今さら拭い去ることはできないと考えている人もいるかもしれません。
しかしそうではなく、子供のころに誤って染みついた考えだからこそ、大人になった今、改めることができるのです。
人間の性格や能力はなかなか変えられませんが、考え方は変えることができます。

劣等感というものは、冷静で客観的な判断によるものではなく、他人に笑われたり、見くだされたりして、怒りや悲しみとともに心に刻みつけられたものです。
口べたであることに悩んでいる人は、子供のころ、まわりの大人に「言いたいことがあるなら、はっきり言いなさい」「うじうじして、情けない子ね」などと言われて、深く傷ついた経験があるのではないでしょうか。
その怒りと悲しみをうまく発散できず、心にため込んでしまい、あまりの苦しさに耐えかねて、「どうせ私は劣っているから」ということで自分を納得させてしまったのです。
劣等感とは、いわば、「再び他人からバカにされて傷つくことを避けるために、『そんなことは言われなくても判っていますよ』という言い訳をつねに心に準備しておくこと」です。

精神が未発達だった子供のころは、傷つき、怒りを解消するすべも知らなかったことは仕方がありませんでした。自分の心を抱きしめ、「つらかったね」と、子供のころの自分に優しく語りかけてあげてください。
能力が足りないことを罪悪であるかのように責められ、深く傷ついたことは、不運であったとしか言いようがありません。

しかし、大人になってもそれを引きずることはないのです。
大人になってから、久しぶりに自分の通っていた小学校に行ってみて、「運動場って、こんなに狭かったのか」と感じたことのある人も多いことでしょう。
子供のころよりも、心も身体も確実に成長し、世界は広がっているのです。

「子供のころにはできなかったが、大人になってできるようになったこと」を数え上げてみてください。
ひとりで日本中のどこにでも行けるし、外国にだって行けます。働いて給料を稼ぐこともできます。子供のころより速く走ることもできるし、重いものを持ち上げることもできます。
何をくだらないことを、と思われるかもしれませんが、劣等感にとらわれるということは、「子供のころにひとりで買い物ができなかったからといって、大人になってもできないと思い込んでいること」と同じなのです。

大人になれば、たとえ他人から認めてもらえなくても、生きていけるのです。
「あなたは口べただ」とバカにされても、「それがどうしたの」と気にしなければすむことなのです。
もちろん、他人から嫌われないようにするのに越したことはありませんが、たとえ嫌われたとしても、それによって被る実害は、嫌われたことを気に病むことによる精神的苦痛に較べれば、はるかに小さいのです。
自分の劣等感は、大げさにとらえてしまいがちですが、他人は、自分が気に病んでいる程度の10分の1、いえ100分の1も気にしていないと思ってよいでしょう。

「私は頭がよくないから、バカにされている」と悩んでいる人は、「頭がよくなくても、皆から信頼される人」になればよいのです。
「私は貧乏だから、他人に相手にしてもらえない」と悩んでいる人は、「貧しいけれど、皆から慕われる人」になればよいのです。
「私は容姿が美しくないから、異性にもてない」と悩んでいる人は、「容姿が美しくなくても、皆からかわいがられる人」になればよいのです。

自分の努力で直せる欠点であれば、直さないよりは直したほうがよいに決まっていますが、何より悪いことは、「この欠点を直さなければ私は価値がない」と深刻に考えてしまうことです。
たったひとつの点で人間の価値のすべてが評価されるほど、社会は単純ではありません。
中には、その欠点を嫌だと思う人もいる。そう思わない人もいる。自分が気にしなければ、何でもないことなのです。

「私は何をやってもダメだ」と深い劣等感を抱いている人でも、世界中でその人自身にしかできない大切なことがあります。
それは、「自分を幸せだと思うこと」です。幸せは、自分の心で実感するしかありません。他人が代わりに自分の幸せを感じてくれることはできないのです。
大富豪にも総理大臣にも代わりはいますが、「自分の幸せを感じること」は、自分以外には絶対にできません。
せっかく自分にだけ与えられた権利をおおいに活用しない手はないのです。

No.200 - 209
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