No.171『人間の弱さを憐れむ』

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ある女性は、引っ込み思案な性格で、自分は一生恋愛などできないと悩んでいたのですが、そんな彼女でも好きだと言ってくれる男性が現れ、付き合うことになりました。
彼は笑顔が素敵で、紳士的で、とても優しい人でした。毎日が幸せでした。

ところが、彼女は大変ショッキングな事実を知ってしまいました。彼は遊び好きで、ほかに何人も付き合っている女性がいたのです。
いい人だと思っていたのに……。あの素敵な笑顔も、優しさも、すべては自分をあざむくための芝居だったのか。そう考えると悔しくて仕方がありません。
有頂天になっていた自分が恥ずかしい。もう男なんて信じられない。彼女は人間不信になり、怖くて男性と話をすることもできなくなってしまいました。

また別のある女性は、妻子ある男性と不倫の関係にありました。
彼は、妻とはうまくいっておらず、いずれ離婚するつもりだと言っていました。
彼女はその言葉を信じて、求められるままに体を許し、彼にすべてを捧げてきました。
彼はまめな性格で、頻繁にメールをくれるし、いつも彼女のことを気にかけてくれるし、わがままもきいてくれます。彼女は、彼に心から愛されているという自信がありました。

しかし、何年待っても、彼が離婚する気配はありません。問いつめても、「子供のことを考えると、今すぐにはできない」とごまかすばかりです。
彼を信じたいが、もしだまされていたらと考えると、不安で夜も眠れません。
彼女は、彼を信用できない自分に嫌気がさし、恋愛をまったく楽しめなくなってしまいました。

人間不信になってしまう人は、「悪い人にだまされないよう注意しなければならない、しかし他人を疑いの目で見るのは虚しい」という葛藤に苦しんでいるのでしょう。
他人を「いい人」「悪い人」のどちらかに分類しようとすると、どうしても踏ん切りが悪くなります。

どれだけ疑わしい点があっても、長い付き合いで情の移った相手を「悪い人」だとはみなしにくく、ずるずると相手の都合に振り回される結果となってしまいます。
他人を憎んでしまえば、自分の心まで汚れるような気がして、自分があなどられているという事実を認めることに躊躇してしまうのです。

例に挙げたふたりの男性は、女性をだまそうなどという悪意はないのかもしれません。彼女を必要としており、手放したくないという気持ちにも嘘いつわりはないのかもしれません。
しかし、その優しさも愛情も、臆病さからくる表面的なものにすぎないのです。
「悪い人」ではないにしても、「弱い人」であることはたしかです。

好きな人に裏切られ、傷つけられれば、悲しいのは当然です。自分がどれだけ傷ついたかを相手に訴えるのはかまいません。他人に都合よく利用されないよう、毅然とした態度をとることも必要です。
しかし、「悪い人にだまされた」と思ってしまっては、なかなか相手を許すことができず、人間を信用できなくなってしまいます。

「悪い人」は「弱い人」です。他人をあざむかなければ自分を守れないほど、臆病で傷つきやすいのです。
「悪い人を許せるかどうか」と考えるよりも、「相手の弱さを受け入れられるかどうか」と考えたほうがよいでしょう。
自分がはげしく愛を求めているのと同じように、相手も枯れ果てた心に潤いを求め、苦しんでいるのです。

恋人がいながらも浮気をしてしまう人は、他人をもてあそんでいるようでいて、本当は自分が嫌われることを怖れ、怯えているのです。
自分が愛される価値のある人間であるという自信がもてないから、浮気をすることによって、嫌われたときのための逃げ道を用意しているのです。

嘘をつきながら不倫を続けている男性も、幸せな家庭を築く自信がないから、自分を必要としてくれる女性をほかに見つけることによって、不安や劣等感をごまかしているのです。
退屈な人生に刺激を求めながら、かといって現在の安定を捨てる勇気もないのです。

憎しみは、自分も他人もよけいに傷つけるだけです。
他人の弱さを受け入れられないのであれば、「相手は自分よりも不幸でかわいそうな人なのだから、気にせず、自分は自分の幸せを見つければよい」と気持ちを切り替えましょう。
他人に裏切られたとき、傷ついた心を慰めるものは、相手の弱さに対する憐れみの心です。

他人の弱さを憐れむということは、相手を見くだすごう慢な態度だと思われる方もいるかもしれません。
しかし、相手が自分の思い通りにならないといって嘆き苦しみ、相手を変えようとしてやっきになるよりは、よっぽどましです。

人は誰も、どうしようもなく弱い存在です。自分をかえりみれば、似たような弱さを抱えていることに気づくはずです。
他人の弱さを認めると同時に、相手の弱さを受け入れられない自分の弱さも認め、互いの弱さを憐れみの中にゆだねてみてください。

自分もまた弱い人間だからこそ、ひとりで生きていくことはできず、他人を必要としているのです。
他人の弱さを慈しむことによって、自分を見つめ直すことができるでしょう。
そこから、解決の糸口は見えてくるのではないでしょうか。

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