No.164『他人を理解する』

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集合住宅での騒音は、人間関係の希薄な都会に住む人にとっては、悩ましい問題です。
幼い子供のいる家庭では、まわりに迷惑をかけているのではないかと気を遣いながら、肩身のせまい思いをしている人もいるでしょう。
子供が泣いたり歩き回ったりすることを完全にやめさせることはできません。かといって、仕方がないのだからほかの住民は我慢すべきだと一方的に押しつけるのも勝手すぎます。

こういう場合、もっともよい解決方法は、日ごろから子供を連れて近所にあいさつに行っておくことです。
近所の人にとってみれば、赤の他人の騒音はうるさく感じられますが、「ああ、あの子が音を立てているのか」と、顔の見える付き合いをしている相手ならば、それほど気にはならないものです。

人付き合いにおいて、まず大切なことは、相手を知り、自分を知ってもらうということです。
誰にでも愛嬌を振りまいたり、付き合いにくい人とまで無理に仲良くなろうと努力したりする必要はありません。
親しくなれなくても、ともかくよく「知り合う」ことで、ほとんどの問題は解決できるのです。

人付き合いが苦手で、殻に閉じこもってしまう人は、自分以外の皆が幸せに見えるか、皆が冷たく感じられるか、どちらかに偏ってしまいがちです。
どちらにしても、世の中は不公平で、自分だけが特殊な問題を抱えていると思い込んでいるのです。
世の中のすべての人が幸せであったり、すべての人が冷たかったりということはありえません。それは、他人のことをよく「知らない」ことからくる錯覚です。

幸せそうに見える人が、実は大きな悲しみを抱えていることがあります。
一見明るく社交的な人が、心の底では他人から見捨てられる恐怖に怯えていることがあります。
大嫌いだった人が、自分にはない長所をもっていることを知り、はっとさせられることがあります。
他人を知るとは、その人に共感することから始まります。すべてに共感できなくても、同じ人間同士、どこかひとつは通じるところがあるはずです。

好き嫌いという感情はさておき、その人をありのままに認めるということが人付き合いの基本です。
他人を認めるということは、節操もなく相手の考え方に同調したり、どんなひどい扱いを受けても我慢したりするということではありません。

好きな人は好きなままに、嫌いな人は嫌いなままに、価値観の異なる人は異なるままに、ただ「あなたはあなたの考えに従って生きる権利がある」と認めるだけでよいのです。「私はあなたのことをこう思っているんだぞ」ということを相手に押しつけてはいけません。
自分が相手を愛しているからといって、相手にも自分を愛するよう要求する権利はありませんし、自分が相手を嫌っているのであれば、相手が自分を嫌う権利も認めなければなりません。

他人をありのままに認めることに慣れてくれば、次の段階として、できれば他人の長所を引き出すよう働きかけてあげればよいでしょう。
「他人のためになることをする」ということは、他人を助けてあげたり、自分のもっているものを分け与えたりすることばかりではありません。
もっとも「他人のためになる」ことは、他人のよいところを引き出してあげることです。

神経質な人は、よくいえば几帳面ともいえますし、くよくよ悩んでばかりいる人は、思慮深いともいえます。
口べたな人は、他人をたぶらかすことのできない善良な人ですし、不器用で動きののろい人は、ずる賢く立ち回ることはできません。

他人の個性を長所として認め、よい方向に活かしてあげるのです。
自分を犠牲にしたり、何か損をしたりするわけではありませんので、裏切られる心配もありません。
どうしても他人に文句を言いたいことがあるときは、みっつ褒めてから、ひとつ苦言を呈すれば、素直に聞き入れてもらえるでしょう。

いろいろな人を理解していくうちに、自分も他人も、似たようなことで喜んだり悲しんだりしている同じ人間なのだということが判ってきます。
他人が自分を愛してくれないと嘆いている人は、自分も他人を愛することができないという劣等感を抱いているのでしょう。
同じように世の中の多くの人も皆、不安や罪悪感や後悔にまみれながらも、精一杯生きているのです。
自分だけが特殊なのではありません。

他人を理解することによって、自分自身が判るようになり、自分自身が判れば、ますます他人も理解できるようになります。
いいことばかりは続きませんし、悪いことばかりも続かないものです。
人間は、誰にとっても自分が特別な存在ですが、客観的に特別な人などというのはいません。
自分に自信をもつためには、現実を変えるのではなく、現実の受け止め方を変えればよいのだということに気づくことでしょう。

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