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たかたまさひろ(著)

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たかたまさひろ(著)

No.162『欲求を解放する』

ある劇団では、新しく入った役者に度胸をつけさせるため、人の多い通りで大声で歌を歌わせます。
新人役者たちは、はじめのうちは恥ずかしそうにしていても、やがて慣れてきて、平気で人前で歌うことができるようになります。

それは、他人の厳しい視線に耐えられるほど神経が図太くなったからではありません。「他人は、それほど自分のことなど気にかけてもいないのだ」ということに気づくからです。
道行く人たちは皆、ちらりと目をやるのですが、たいして気にもかけず去っていくのです。
役者たちはやがて、「もっと注目されるにはどうすればいいか」と考えるようになります。
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恥ずかしがり屋の人は、たいてい、自己顕示欲が強いものです。本当は、他人から注目されたくて仕方がないのです。
「人と話すのが恥ずかしい」という感情の裏には、「他人は、いつも自分のことを細かく気にかけているに違いない」という思い上がりがあります。
それを抑圧し、ごまかそうとして、まったく反対の行動をとってしまうのです。

他人から注目されたいという欲求は、通常の人付き合いではいろいろ困ることもあるでしょうが、悪いことばかりではありません。
たとえば役者という職業は、自己を表現したいという強い欲求がなければ、観客の心に響くようなよい演技はできないでしょう。
劇団が新人役者に人前で歌わせるのは、自分の素直な欲求を自覚させるためでもあります。

気が強く負けず嫌いの人は、スポーツ選手になるには有利でしょうし、神経質で凝り性の人は、芸術家や職人に向いています。
どんな欲求も、無理に抑圧せず、よい形で解放する方法を見つけてやれば、かえって自分の大きな強みとなるものです。

「自分は容姿がみにくいからモテないのだ」という人がいます。
「なぜ他人は皆、容姿で人を判断しようとするのだ」と嘆いているのですが、実はそういう本人が一番容姿にこだわっているのです。
本当に自分が「容姿は人間の価値とは関係がない」と思っているのであれば、容姿のこと自体が気にならないはずです。

世の中のほとんどの人は、他人の美しさというものを、目鼻立ちのみによってではなく、内面からにじみ出る表情なども合わせて判断しているのに、「容姿で人を判断するな」と訴えている当の本人だけが、「生まれつきの美人やハンサムでなければ愛されない」という偏見に凝り固まっているのです。
そういう人は、以前に誰かから容姿のことを悪く言われ、その人をずっと許せずにいるのでしょう。
人を許せない自分が許せないから、いつまでもこだわってしまうのです。
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自分に自信がもてない人は、自分は他人に何かを許してもらわなければならない立場なのだと思い込んでいます。他人が許してくれないから、自分は他人を怖れてばかりいるのだ、というわけです。
しかし、実は逆なのです。自分は「他人に許しを請う側」ではなく、「他人を許す側」なのだということに気づいてください。
自分の心の裏側に渦巻いている「他人への怒り」を解放してやらなくてはなりません。

他人がどういう言動をしようとも、「その人がそうした、そう言った」という事実があるだけです。何かが減るわけでも、飢え死にするわけでもありません。
殿様の機嫌を損ねれば切り捨てられることもあった江戸時代ならまだしも、自由と平等の時代である現在、「この人に認めてもらわなければ、自分は絶対に生きていけない」などという相手は存在しません。

腹が立ったり、ショックを受けたりしたときは、「それによって、どのような実害を被ったか」を冷静に考えてみてください。
たいていのことは、取るに足らないことなのです。人生の目的は、「他人にバカにされないこと」ではないはずです。

他人は、自分以上には自分を理解してくれません。
自分のことをもっともよく判っているのは、自分自身なのです。
「他人に理解してもらうこと」を求めすぎてはいけません。自分が自分の素直な感情や欲求を認めてやれば、それで充分なのです。

自分の良心にやましいところがなければ、誰かの許しを請う必要などありません。自分の欲求に従い、思うままに生きればよいのです。
そのためにはまず、自分を傷つけた人を許し、自分自身を許してください。
人は皆、「許してもらわなければならないこと」よりも、「許さなければならないこと」のほうがはるかに多いのです。
(おわり)

ありがとう ロングセラー 45刷
こころのおそうじ。(だいわ文庫)
たかたまさひろ(著)
定価 770円(税込)

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メッセージ No.160-169
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