No.159『不快な感情を適切に処理する』

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ある人は、友人がいつも皆の前で自分を笑いものにしていることに腹を立てています。
といっても、友人は本気で自分をバカにしているわけではなく、冗談まじりに話しているだけで、皆も楽しそうに笑っています。

彼は、そんな些細なことで腹を立てて場の雰囲気を壊すのも大人げないと思い、なかなか友人に文句を言うことができず、愛想笑いをしてごまかしてしまいます。
しかし、やはりバカにされることは悔しいので、ストレスはたまる一方で、だんだん友人を避けるようになってしまいました。

彼の問題点は、文句を言えないということではありません。
文句を言ったほうがよいかどうかは、本人の性格や考え方にもよるし、友人との関係にもよるもので、一概にどちらが正しいとはいえません。

彼は、「些細なことで腹を立てるのは大人げない」と言っていますが、それは本心ではなく、ただ「大人げない人間だと思われることが悔しい」だけなのです。
彼が心の底から「腹を立てるのは大人げない」と思っているなら、それでいら立ちはおさまり、悩みは解決されるはずです。
彼は、文句を言うにしても、我慢するにしても、どちらにしても自分の意志が中途半端で、他人の機嫌ばかりを気にかけているところが問題なのです。

健全な人間関係を築く上では、怒りを表現しなければならないときもあります。
腫れものに触るように気を遣い合っていては、信頼も尊重も生まれません。
彼が友人のことを大切に思うなら、互いの関係をよくするために、怒りを適切に表現しなければなりません。
相手に悪気はなかったとしても、自分が傷ついているのは事実なのですから、「君のことは尊重しているが、こういう点だけは納得できない」と、気持ちを素直に打ち明ければよいのです。

また、相手に悪気はないのだから気にすることはないと本気で思うのなら、自分も冗談で悪口を言い返すくらいの心の余裕をもてばよいでしょう。
心の通い合った友人同士であれば、「本気でバカにしているわけではないことを判ってくれる」という信頼関係があるからこそ、軽い悪口を言い合えるということもあります。

言っていいことと悪いことの境界は、人によって異なります。その頃合いは、付き合っていく中で感じとっていくものです。
友人に悪口を言われて、内心では腹が立っているのに、笑ってごまかしていれば、友人は「これくらいなら言っても大丈夫」と判断するでしょう。
「気軽に悪口を言い合える関係」か、「絶対に悪口は言わない関係」か、どちらを選ぶかは、自分の自由です。重要なことは、自分が友人とどういう関係を築きたいのか、態度をはっきりと表明するということです。

ある人は、極度のあがり症で、他人とうまく話をすることができません。
彼は、恥ずかしいという感情を何とか打ち消そうと必死で努力しているのですが、どうしても人前では緊張してしまい、そんな自分を卑下して落ち込んでしまうのです。

彼の問題点は、恥ずかしいという感情を抑えられないことではありません。
自分が心から恥じるのではなく、「他人から恥ずかしい人間だと思われること」を怖れてしまっていることが問題なのです。

恥ずかしいという感情を何でも抑え込めばよいというものではありません。
本当に恥ずべきことは、しっかり恥じるべきなのです。恥を知らない人間ほど見苦しいものはありません。
自分がうっかり他人を傷つけてしまったり、他人に迷惑をかけてしまったりしたときには、心から恥じ入ることが、二度と同じ過ちを繰り返さないために必要なことです。

恥とは、自分を愛し、他人を愛するがゆえの自律心から生まれるものであり、自分を嫌いになるような恥は、本当の恥ではなく、他人への怒りや不満のすり替えにすぎません。
他人と接すること自体を恥ずかしいと思うのは、「他人は皆、私の一挙一動に関心を払うべきである」「私を尊重しない人は許せない」というごう慢さの裏返しです。
必要以上に自分を卑下する心理の裏には、そうすることによって他人の同情を引き、自分に気を遣わせようという意図が働いているのです。

重要なことは、恥ずべきこととそうでないことをきちんと区別するということです。
何を恥ずかしいと思うかということは、まさに個々人の価値観の反映そのものであり、自由に決めればよいのですが、ひとつ共通していえることは、「自分に何の悪意も過失もなく、他人を傷つけてもいないことを恥じる必要はない」ということです。

人間関係を築く上で障害となるのが、「怒り」と「恥」です。
これらは不快な感情であり、他人との関係を壊してしまうという不安を感じるので、つい無意識に抑えてしまいがちです。
しかし、人間に与えられた感情に不必要なものはないはずです。ありのままに感じ、適切に表現すれば、むしろ人間関係を進展させるものとなるでしょう。

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