No.147『理想を他人に押しつけない』

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人間関係において感じるストレスの原因は、さまざまです。
嫌なことを言われた、意見が合わない、してほしいことをしてくれない……。
しかし、同じ状況のもとでも、ストレスを感じる人と感じない人がいます。
やはり結局、ストレスは自分の心が生み出すもので、自分の問題なのです。

ストレスの原因はさまざまですが、ストレスを引き起こす心の働きは、突きつめて考えれば、ほぼ共通しています。
他人に対して「思い知らせてやらなければ気がすまない」という憤りです。

自分をバカにした人が許せない。同じ悔しさを味わわせ、自分がどれだけ腹が立ったかを「思い知らせてやりたい」。
恋人が自分に気を遣ってくれない。自分がどれだけ傷ついているか、相手がどれだけ冷たい人間であるかを「思い知らせてやりたい」。
偉そうにいばっている上司が気にくわない。自分は表面的にはへつらっているが、本当はどれだけ心の中で嫌っているかということを「思い知らせてやりたい」。

「他人に思い知らせてやりたい」という感情は、「自分の気持ちを判ってほしい」ということでもあります。
相手を憎んでいながら、また一方では、自分の気持ちを理解してくれることを求めている、つまり心理的に依存しているのです。
嫌悪感と依存心、相反するふたつの思いの矛盾に苦しんでいるのです。

嫌いな人を好きになれと言われても、なかなかできることではありません。
心の中で嫌うだけなら、別に問題はないのです。
その感情を自分の中だけで処理できず、「相手に思い知らせてやらなければ気がすまない」と考えてしまうことが、苦しみを生み出すのです。
相手を軽蔑しているなら、そんな軽蔑すべき相手にさえ理解されることを求めている自分は、もっとちっぽけな人間だということになります。

他人を嫌う人は、理想を盾にとって、何らかの正当な理由づけをするものです。
他人をバカにするのは悪いことだ。だから、自分をバカにした人が許せない。
何かをしてもらったら、感謝するのが当然だ。贈り物をしてあげても礼の一言もいわない隣人は、非常識だ。
夫婦は互いに何でも話し合い、思いやりの気持ちをもち合うべきだ。だから、自分に冷たい態度をとる夫が許せない。

人間としてこうあるべき、という理想を思い描くのは、よいことです。
しかし、それは自分を律するためのものであって、他人に要求するものではありません。
他人に押しつけようとする気持ちが生まれるならば、自分もその理想を自分のものとしていないということなのです。
自分が劣等感をもっているから、他人にも同じ劣等感を抱かせてやりたいと思ってしまうのです。

地位を利用して偉そうにすることが、人間として恥ずかしいことだと心から思っているならば、尊大に構える上司に対して、憐れみは感じても、腹は立たないはずです。
腹を立てる人は、自分もできるなら偉そうにしたいのに、それだけの地位がないから悔しいだけなのです。

恋人の自分に対する思いやりが足りないと腹が立てている人は、自分の相手への思いやりも、積極的な意志によって行っているものではなく、自分が嫌われるのが怖いからしぶしぶ気を遣っているにすぎないのです。
だから、「自分だけが我慢をさせられている」という被害者意識が生まれ、「我慢をしていない相手」に腹が立つのです。

自分が「こうすることが当然」と思うことでも、他人に要求するのは当然ではありません。
他人に何かをしてもらったとき、礼をいうのは当然です。しかし、他人に何かをしてあげたとき、感謝されるのが当然と考えるのは間違いです。
友人や恋人、配偶者に対して、思いやりの心をもつのは、当然です。しかし、自分が他人に思いやりを求めることは、当然ではありません。
他人の悪口を言わない人は立派な大人ですが、自分がバカにされたからといって腹を立てる人は、幼稚な子供です。

といっても、自分の感情や欲求を押し殺して我慢するのがよいというわけではありません。
相手との関係をよくするために、また困っている人を助けるために、建設的な提案をするのは、まったくよいことです。
しかし、単に自分が気に入らないという理由だけで文句をいうのは、何の解決にもなりません。

他人に思い知らせる必要などないのです。そんな手段で一時的に気を晴らしても、自分の度量の小ささにますます嫌気がさすだけです。
他人に理解されることを求めなくても、自分で自分の気持ちを大切にできれば、それでよいのです。
自分を卑下して劣等感に悩むのでもなく、高慢に他人を見くだすのでもなく、自分を真ん中に置いてください。
つねに自分を真ん中に置き、自尊心と謙虚さのバランスをうまくたもてるようになれば、バカにされても腹は立たず、他人への要求も抑えられ、対人関係におけるストレスはしだいに減っていくはずです。

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