No.061『自分を中心に考える』

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ある人が、飼い犬のいたずらに困っていました。
家の中で掃除機をかけると、犬は、掃除機を生き物だと思っているのか、ブーンという音に反応して、駆け寄ってきて柄の先に咬みつくのです。いくら叱りつけて引き離そうとしても、犬は言うことをききません。
これでは掃除をすることができず、飼い主は困り果てて、ペットのしつけの専門家に相談しました。すると、専門家は、いとも簡単に犬のいたずらをやめさせることができたのです。

犬が掃除機に咬みついてきたとき、まず、引き離して、やめさせるところまでは同じです。
その後が肝心でした。「いたずらをやめたこと」を褒めて、頭を撫でてやるのです。それを数回繰り返せば、難なく犬は言うことをきくようになります。
「叱られたからやめた」のではなく、「自らの意志でやめた」のだと思うことにより、犬の自尊心(?)は保たれたのです。

犬と人間を同じに扱ってはいけませんが、これは、人間の子育てにも役立つやり方でしょう。
子供が言うことをきかないからといって、叱りつけて、「恐怖による支配」で操ろうとしても、素直な子供には育ちません。
子供が、「人に言われたから」ではなく、自らの意志によって行動できるように育てることが、本当のしつけだと言えます。

恐怖による支配で育てられた子供は、「自分の自由な意志をもつことは許されない」「何をするにも他人の許可がいるのだ」と考えるようになります。
悪いことがあったときには、親から「お前が言うことをきかないからだ」「お前が悪い子だからだ」と言われ続け、自分は価値のない存在だという考えを刷り込まれます。
自分の喜びのために生きるのではなく、「他人に認められること」「恥をかかないこと」「他人に許してもらうこと」を重要視するようになります。

そのような育て方をした親にかぎって、子供が成人すれば、今度は、「自分の意志をもち、はっきりと自己主張すること」を求めるようになるのです。そして、それができない子供を、「情けない」と非難します。

子供のころから、自分の意見や素直な感情を表現することを許されず、親の顔色をうかがい、親の言いなりになって生きることを強要されておいて、大人になったからといって、「さあ、これからは自分の力で生きていきなさい」と放り出されても、そう簡単にできるはずがありません。

そのような親に育てられた人は、まったく不運ではありましたが、いつまでも嘆いていても仕方がありません。
性格とは、「考え方の習慣」だということができます。何でも悪い方に、暗い方に考えてしまうからといって、人格や人間の価値としての問題だなどと考えることはありません。それは、子供のころから染みついた習慣にすぎないのです。
考え方の癖を変えれば、誰でも明るい性格に変わることはできます。

自分のことしか考えず、わがまま勝手に振舞う人のことを、「自己チュー」などと言いますが、正確に言えば、それは自己中心的なのではなく、むしろ、「他者中心的」なのではないでしょうか。
他人の迷惑をかえりみず、わがままばかり言う人も、自分の価値に自信がないから、「自分は、他人に迷惑をかけても許される、特別な権利があるのだ」という優越感で姑息な自尊心を保っており、また同時に、「他人がどこまで許してくれるか」ということを試しています。「他人に許してもらうこと、受け入れてもらうこと」の中でしか、自分の価値を見出せないのです。

「自己チュー」な人は、自分を愛し、自分を大切にしているかというと、決してそうではなく、いつも他人の評価に怯え、びくびくしています。
他人の評価が怖いから、自分をごまかし、そして、自分の心と正面から向き合うことを怖れて逃げてばかりいるから、自信がもてず、他人の批判に怯えなければならない、という悪循環の中で苦しんでいます。

「他人から認められ、愛される人間になるには、どうすればよいのか」と悩んでいる人に対して、私はこう断言します。
「他人の関心を引き、他人から認めてもらうことばかりを考えていては、一生、心の安定は得られませんし、幸せにはなれません」

他人は、自分を理解してくれなくて当然なのです。これは決して、冷淡な開き直りでも、人間不信にもとづく考え方でもありません。
他人に理解してもらえたなら、それは心から感謝すべきことですが、当然のように要求すべきことではありません。

恋人や友人に対して、不満や愚痴など、言いたいことがあるなら、まず、「自分の素直な気持ちを表現できるということ」を大切にし、そういう自分を愛しいと感じれば、それで充分なのです。よい意味での「自己中心的」ということです。
「自分が、良心とプライドにかけて、素直な気持ちに従って、本当にそうしたいと思うから、する」ということを何より大切にしてください。
「相手が自分の気持ちを理解してくれること」まで強要してはいけません。そうしなければ満足できないのは、他人に依存ばかりする「他者中心的」な考え方です。

他者中心的な人は、ともすれば、「他人を尊重する」ということを、「何でも他人のわがままを許し、言いなりになる」ことだと勘違いしてしまいます。そして、他人を操作しようとする人に、うまく利用されてしまいます。
これも、「自分の意志をもたず、他人からどう見られるかということばかりを気にする」結果です。意志を伴わない優しさは、自分を傷つける結果に終わるだけです。

よい意味で自己中心的な人は、他人に流されず、かといって自分の都合だけを押し付けることもなく、他人と健全な人間関係を築くことができます。

自分を中心に考えることができる人は、自己価値というものを、「自分の気持ち、自分の考え、自分の言動」の中だけで完結することができます。
他人からどう評価されるかということは、あくまで「おまけ」にすぎないのです。

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