No.060『生活のテンポを落としてみる』

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こころのおそうじ
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先日、近所を歩いていたときのことです。
広い通りの横断歩道を渡ろうとしたところ、信号が赤に変わりかけていたので、わざわざ走って渡ることもないと思い、待つことにしました。
後ろから、若いお母さんと、幼稚園児の娘さんが猛然と駆けてきました。お母さんは、「早く!急ぎなさい!」と、娘さんに叫んでいます。娘さんは、今にも泣き出しそうな顔で、必死でお母さんの後を追ってきていました。

結局、母娘は間に合わず、信号は赤に変わってしまいました。お母さんは、「ほら、あんたがグズグズしてるから、渡れなかったじゃないの!」と、娘さんを叱りつけました。娘さんは、ついに大声を上げて泣き出してしまいました。
よほど急がなければならない事情があったのだろうと思って見ていると、信号が青に変わった後、そのお母さんは、特に急ぐ様子もなく、悠然と歩いていきました。

信号を待つ時間など、ほんの数十秒の間です。1日24時間の中で、数十秒の損が、それほど重大なものでしょうか。
娘さんにしてみれば、のんびり、お母さんと会話を楽しみながら歩きたかったのではないでしょうか。

お母さんも悪気があったのではないでしょうが、青信号が点滅しているというだけで、「早く渡らなければいけない」と勝手に思い込んでしまったのです。
自分の勝手な思い込みを、娘さんにも押し付け、それに従わないからといって叱りつけるのは、身勝手ではないでしょうか。

都会では、駅などのエスカレータで、片側(関東は右側、関西は左側)を急ぐ人のために空けておくという、奇妙な暗黙のルールが、いつの間にかできてしまっています。
二列になれば、皆がスムーズに乗れるのに、右側を空けなければならないために、エスカレータの乗り口が渋滞しているときがあります。
エスカレータの上をわざわざ足で歩いたからといって、どれだけ速くなるというのでしょうか。せいぜい、10秒ほどの違いではないでしょうか。

せまいエスカレータを歩くのは、他人にぶつかって転倒させる可能性もあり、大変危険です。お年寄りや足の不自由な人は、いつも冷や冷やしているのです。
たまに、右側で止まっている人に対して、「邪魔だ、どけ!」と文句を言っている人がいます。何十分も待たせられたのならともかく、たった10秒を急ぐために、なぜそこまでイライラするのでしょうか。
足腰を鍛えるために歩くというのなら、階段を使えばよいのです。

電車に駆け込み乗車をする人、黄信号を強引に突っ切ろうとして立ち往生する車、人通りの多い道を自転車で縫うようにして走る人……。何をそんなに急ぐ必要があるのだろう、と不思議に思うくらい、せかせかと急いでいる人がいます。
おそらく、深く考えもせず、特に理由もなく、「ただ急いでいる」だけなのでしょう。

他人に危害を及ぼす危険をおかしてまで急ぐ必要のある人が、いったいどれだけいるというのでしょうか。特に、駅のホームや階段などの危険な場所で走るのは、犯罪とも呼べる愚かな行為です。

赤信号で止まったり、電車に乗り遅れたりして、イライラしたときは、ひとつ深呼吸をして、冷静に考え直してみてください。
「わずか数十秒、数分の遅れが、私の人生に、いったいどれだけの影響を与えるというのだろうか」

ときには本当に急がなければならないときもあるでしょうが、そんなことはごくまれで、ほとんどの場合、一分一秒を急ぐ必要などないはずです。
駅のエスカレータをわざわざ歩かなければならないほど急いでいるならば、家をほんの数分早く出ればよかったのです。

いつも何かにせき立てられるように急ぎ、焦り、イライラしている人は、生活のテンポを少し落としてみませんか。
イライラすることの原因のほとんどは、自分の勝手な思い込みです。

駅のホームに着いたとき、目の前で電車が発車してしまったとしても、悔しがることはありません。何も損などしていないのです。
「これで、本を読む時間が増えた」
「駅のまわりの景色をのんびり眺めてみよう」
「次の電車を待っている間に、懐かしい友人に再会したり、新たな出会いがあったりするかもしれない」
と思えばよいのです。むしろ、その方がわくわくして、心が躍りませんか。

生活のテンポを落としてみれば、心に余裕ができます。時間に関することにかぎらず、「自分の勝手な思い込み」を見直すきっかけになります。
自分の思い通りにならずに腹が立ったときは、まず、「こうあらねばならない」という思い込みを疑ってみてください。そして、自分に問いかけてください。
「思い通りにならなかったといって、いったい、自分はどれだけ損をしたというのだろうか」と。
本当に腹を立てるべきことなど、めったにないはずです。

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