No.032『自然な振る舞いを心がけよう』

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こころのおそうじ

こころが休まる本

観光地などの飲食店で、店員さんが店先で、「いらっしゃいませ! お席は空いておりますので、どうぞお入りください!」と、大声で叫んでいるのをたまに見かけます。
熱意があるのは判りますが、客の心理をまったく理解していない、下手くそな商売のやり方です。そういう店は、たいてい流行っていません。

普通、人は、まったく知らない店に、「お入りください」と言われたからといって入るものではありません。
まずメニューのサンプルや店内の雰囲気などをのぞいて見て、なかなかいい感じだと判断してから、入るのです。
店先に店員さんに立っていられては、立ち止まって店内をのぞくことにも気後れを感じてしまいます。少しでものぞけば、必ず入らなければならない雰囲気になってしまうのではないか、という威圧感を受け、皆、素通りしてしまうのです。
最初からこの店に入ることを決めてきた人は、わざわざ呼び込まなくても入ってくれるのですから、「呼び込み」はまったく無駄な行為だと言えます。

人付き合いの下手な人は、これに似たことをしてしまっています。
なかなか友人や恋人ができないと悩んでいる人は、少しでも自分に優しく接してくれる人がいると、「この人を逃がすまい」として、いきなり深い付き合いを要求し、束縛しようとします。

無意識のうちに、「私と付き合うからには、真剣に向き合ってください。後で裏切ったりすると、許しませんよ」という態度を示してしまっているのです。
相手は、それを負担に感じ、敬遠します。「来る者は拒まず、去るものは追わず」という態度で自然に接していれば、いずれ仲良くなれたかもしれないのに、ことを急いだばかりに、せっかくのチャンスを逃してしまっているのです。

どんなに深い友情、愛情を結んでいる人たちでも、はじめから深い付き合いをしていたわけではありません。長い時間をかけて、培ってきたのです。
人付き合いの下手な人は、「人と親しくなる」という過程を楽しむことなく、「自分には親しい人がいる」という結果だけを求めてしまうのです。
「さあ、私と真剣に付き合いますか、それともまったく無視しますか」と、極端な二者択一を迫っているわけです。
店の売り上げを伸ばすことばかり考えて呼び込みをするのと同じです。

「自然に振舞う」というのは、しかし、できない人にとっては、なかなか難しいことでしょう。
「自然に、自然に」と意識しているうちは、自然とはいえません。
細かいことにとらわれすぎてもいけないし、かといって、何も考えずに行動するのもよくありません。

人間関係は、将棋やオセロゲームのように、相互に一手ずつ指しながら進めていくものです。
自分だけが勝手に三手も四手も指したり、相手の指し手をこちらの都合で強要したりすることは、ルール違反です。
自分の読み筋通りに進むとはかぎりません。相手がどう指すかによって、こちらの指し手も変わってきます。

ビクビクと相手のご機嫌を伺うのでもなく、自分の気持ちを押し付けるのでもなく、あくまで「自然に」。
こればかりは、経験の中で体得していくほかはありません。将棋に強くなるためには、解説書を読んで勉強するばかりでなく、実戦を重ねるということが必要不可欠であるのと同じです。
駆け引きを駆け引きだと感じなくなった時、気がついたら自然に振舞うことができていた、という日が必ずくるでしょう。

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