他人の裏切りが許せないとき

No.255 『他人の裏切りが許せないとき』

20代前半のある女性は、自分を裏切った恋人を許すことができず、苦しんでいます。
恋人だと思っていた男性は、ほかにも複数の女性と同時に交際しており、ある日突然、そのうちのひとりと結婚してしまったのです。
何も知らなかった彼女は、いきなり彼から「結婚する」と聞かされ、別れを告げられたというわけです。

彼女はショックを受け、ただ呆然とするばかりでした。
やがてそのショックは怒りへと変わり、復讐という言葉が頭に浮かぶようになりました。
彼が自分だけ幸せそうにしていることが許せない。彼の人生をぶち壊してやりたい。その衝動が抑えられないのです。
まわりの友人たちは、口をそろえて「復讐などやめたほうがよい」と言います。「そんな男と別れてよかった」「仕返しをしても、虚しさが残るだけだ」と慰めてくれます。
それは頭では判っています。しかし、このまますごすごと引き下がるだけでは、腹の虫がおさまらないのです。

彼女は、どう心の整理をつければよいのでしょうか。
選択に迷ったときは、「すがすがしい気分になる」ほうを選んでおけば、間違いはないと思ってよいでしょう。
仕返しをすれば、一時的に気は晴れるかもしれません。しかし、その心境は、「すがすがしい気分」とはほど遠いものです。
彼が本当にひねくれた人間だとしたら、仕返しの仕返しをしてくる可能性もあります。彼女は、その不安にも怯えなければなりません。

たしかに、どちらが悪いのかといえば、悪いのは彼のほうです。
「あんな悪い奴をのさばらせておいてよいのか」という不満もあるでしょう。
しかし、彼をいくら責めても、彼女が幸せになれるわけではありません。
世の中には、もっと悪い人間もたくさんいます。どうせそれらすべての人を懲らしめることなどできないのですから、いちいち気にしていてはきりがありません。

「悪い人間」というのも、比較の問題にすぎません。強盗や人殺しに較べれば、彼もかわいいものだといえます。
身勝手な人間は、世間からつまはじきにされるでしょうし、法律を犯せば、警察が捕まえてくれるでしょう。
悪い人間を取り締ることが彼女の務めではないのです。

彼女は、人生の大切な時間をもっと有効なことに使うべきです。
今、最優先に考えるべきことは、「この経験をどう次に生かすか」ということです。
彼女が再び新しい恋愛に踏み出すとき、「もしまた裏切られたら、同じように復讐をすればよい」とは思わないでしょう。そんな心づもりで、楽しい恋愛などできるはずもありません。
「仕返しをしなければ気がすまない」というのは、とりもなおさず、「自分は相手にとって何の価値もなかった」と認めるようなものです。
(↓ つづく)

彼は、彼女を裏切り、一方的に別れを告げました。それは、彼女と付き合うことによってえられるよろこびや楽しみを放棄したということです。それ自体が彼にとって大きな損害であるはずです。
彼女が、彼に仕返しをしなければ釣り合いがとれないと考えるのは、「自分と別れても、彼は何も損をしない」、つまり、「自分と付き合っても、相手は何の楽しみもえられなかった」と自分で認めてしまっていることになるのです。

他人に裏切られたときは、こう思うだけで充分です。
「相手は、私に信頼され、私に尊敬され、私に愛されることのよろこびを放棄した」
自分に自信があるなら、それ自体が最大の仕返しだと思えるはずです。相手は自分からみすみす大きな損害を被ったのですから、それで充分なのです。

彼女が、彼に振られて悔しいのは、ほかに楽しいことがないからです。
自分には彼と付き合うことだけが楽しみだったのに、彼にはそれ以外に楽しみがあるということが許せないのです。
彼女が、自分で人生の楽しみをつくり出そうとせず、彼に楽しみを分け与えてもらうことばかりを考えていたことが、そもそもの間違いだったといえます。
彼女も、悪い言い方をすれば、彼を利用しようとしていたということになります。
他人を利用する人は、結局、さらに計算高い人間によって利用されて悔しい思いをするはめになるのです。

彼女が、この経験を次にどう生かすか。それは、自分から楽しみを見つけ、他人に楽しみを分け与えられるような人間になるということです。
それこそが、もっとも「すがすがしい気分になる」選択ではないでしょうか。
自分でつくり出した楽しみは、誰も奪うことができません。
そして、他人によろこびや楽しみを分け与えられる人は、たとえそれを他人に拒絶されたとしても、腹を立てることはありません。
自分の人生を心から楽しんでいる人は、他人からどう思われるかなどということは、たいして気にならないのです。

(文・たかたまさひろ)
No.254 『見返りを求めない心』 No.256 『内から外に向かう幸せ』
たかたまさひろの本 おかげさまでシリーズ計27万部
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